注:フィクションです

私は川が好き。どこから来たのか知らないけれど、出会ってすぐに、またいそいそと流れていく。葉っぱや小枝、時にはくらげみたいなビニール袋も、色んなものを分けへだてなく乗せて、ただ流れていく。そんな水面を眺めていると、私の心も洗われた気になるのかな。川はいつかどこかにたどり着く。悠々と流れた川も、いつかはもっと大きな水と一つになってしまうんだ。

川に気持ちなんてないかもしれないけれど、やっぱり流れてきたプライドってものがあるだろう。支流と本流なんていうけれど、支流には支流で歴史がある。加茂川出身の流れはやっぱり淀川まで来ても京都風吹かせちゃったりしてるのかな。でも結局みんな長いものには巻かれるんだな。母なる海にかえっていくんだ。湖にたどり着くこともあるか。でも海か湖かなんて人が決めただけで、水たまりだって立派な海だ。

川が合流するのはワクワクする。仲間を増やして大きくなって、大海原に挑むんだ。私が切り取る写真では、川はまっすぐ流れるけれど、いつまでもそんな飄々としてるわけじゃなくて、私の知らないドラマがあるんだろう。もしかしたら支流にとっては仲間じゃなくてライバルだったり。川をはじめからたどると、どんどん敵が強くなっていって、最後は世界と戦うぞ、なんて。男子の読んでるマンガみたい。

川のはじめってなんだろう。水の循環って習ったな。海まで行った水は、気体になって、また雨になって色んなところに降りそそぐ。そうして地面に落とされた水は、運が良ければ仲間を見つけて川になってまた海まで帰ってくる。木の沢山ある山なんかは、水を地面の中にたくわえてるんだっけ?そういえば、昔山に登ったときに川の赤ちゃんみたいなの見たことあったな。登るときはあんまり意識してなかったのに、下山のときはあれよあれよと太くなっていく。最初はふらふらくねくねしてても、山から出る頃には一人前の川になってる。ちょっと私たちに似てるかも。

川がそうやってどんどん太くなっていくのって、なんか木の形に似てるかも。木はむしろ逆に枝分かれしていくんだけど。でも私、木が枝分かれする瞬間見たことないかも。いや小学校の理科の時間にそんなビデオ見たな。木じゃなくてもっと小さい植物だけど。早送りでまさにニョキニョキ枝が増えていくの。ちょっと怖いって思っちゃった。

木は生きているっていうけれど、川はそうでもないのかな。あんな勢いで去っていくのにいつまで経ってもそこにいるなんて、川全体で口裏合わせて流れているんじゃないのかな。私はちょっとちっぽけ過ぎて、川の気持ちはわからない。荒っぽい川もあるけれど、怒るのはそれでもまれだったりして、やっぱり川も木とかみたいに長い時間を生きている。

川にも色々あるみたいだけど、やっぱり私は川が好き。不平不満はおくびにも出さず、ただ悠然と進んでいく。眺めていると淡々としているけれど、何故かわからないけれど見飽きさせない。いずれ終わりが来るけれど、今を堂々と生きている。川みたいな人に私はなりたい。